「ギフテッド」とは
「ギフテッド」とは、平均よりも著しく高い知的能力、想像力、芸術的才能などを持つ子供たちのことを指します。「才能を授かった子」という意味です。ただしその特性は一様ではなく様々なタイプがあります。
主なギフテッドのタイプ
タイプ | 特徴 |
知能型 | IQが非常に高く、論理的思考に優れる |
創造型 | 発想が豊かで、自由な思考を好む |
芸術型 | 音楽・美術・文学などで高い表現力を示す |
運動型 | 運動能力が飛びぬけて高い |
リーダー型 | 指導力・影響力を持ち、グループの中心になりやすい |
ほかの障害と誤解されやすいギフテッド
誤解されやすい障害 | ギフテッドの特徴との違い |
ADHD(注意欠如・多動症) | 授業に集中できないことがある(集中できないのではなく退屈に耐えられない)が、興味あることには異常に集中できる(ハイパーフォーカス) |
ASD(自閉スペクトラム症) | 人と違う考え方を持つため、こだわりやマイペースさが誤ってASDとみなされることがある |
LD(学習)障害 | 特定分野(例:算数は得意、国語は苦手など)で著しい差があり、周囲から「できない子」「凸凹のある子」と見られがち。 |
※「2E(Twice Exceptional)」という言葉があり、ギフテッドでありながら発達障害も併せ持つ子もいます。
日常で現れやすい困りごと
- 興味のあることしか取り組まない
- (興味のない)宿題が苦痛
- 同年齢の子と話が合わない(大人びた話題や言葉)
- 些細なことに強く反応する(感覚過敏)
- ミスを極端に嫌う(完璧主義)
- 不公平に敏感で怒りを感じやすい
- 退屈に耐えられない(授業についていけないのではなく、授業が簡単すぎて合わない)
親としての関わり
- 「早く伸ばす」よりその子の「心を守る」が最優先
- 比較せずに、その子の心地よいペースを大切にする
- 才能でなく、「人格」を肯定する声掛けを
- その子の「敏感さ」に寄り添った環境調整を意識する
- 授業がつまらなかったら、その子の興味に沿った探求型の学びを家庭で補う
- 「失敗は成長の一歩」と失敗体験をもポジティブに共有する
- 視覚支援機器などその子にあうデバイスの導入をサポートする
集団の中で注意点
ギフテッドの子供は、その知能の高さゆえに集団の中で浮きやすいという特徴があります。
トラブルになりやすい場面:
- 他の子のミスを指摘してしまう
- 「なんでこんなこともわからないの?」と見下した言葉をいってしまう
- 指導に対して「それは違う」と反論してしまう
- 遊びや勉強を一人でどんどん進めてしまう
- 遊びのルールに厳しすぎる
周囲の大人に求められること:
- できる部分だけで判断せずに「困っている部分」にも目を向ける
- 行動の背景を理解し、否定的に捉えすぎない
- 知的な課題ばかりでなく、感情面・人間関係の成長も大切にする
保育者・教師向けの対応方法のコツ
ギフテッドの子は、集団生活の中で目立たないこともありますが、本人の中で不安や違和感を強く抱えている場合もあります。そのため対応には配慮が必要です。
①「できて当たり前」にしない
ギフテッド=万能ではありません。「得意な分野」と「極端に苦手な分野」が同居していることもあります(これはアンバランス型ギフテッドと呼ばれます)
②質問や興味に対して、「後で一緒に調べよう」が有効
突拍子のない質問をする子に戸惑うこともありますが、「ダメ」「うるさい」など否定的な言葉ではなく「後で一緒に考えようね」と受けとめるだけで信頼関係が生まれます。
③感覚過敏や歌集中に配慮
ちくちくした服や蛍光灯の明るさ、騒がしい音に耐えられない子もいます。イヤーマフや席替えなど環境調整も有効です。
④トラブル時は意図より「気持ち」に注目
一見わがままに見える行動の裏に「混乱」や「不安」「退屈」などの気持ちが隠れていることが多いため、背景を理解する視点が大切です。
ギフテッド児の「心の疲れやすさ」とメンタルケアの重要性
どうしてギフテッドの子どもは心が疲れやすいのか?
ギフテッドの子供たちは「知的な鋭さ」だけでなく「感受性の強さ」も併せ持っていることが多いです。例えば、
- 小さなことでもきになってしまう(感覚過敏)
- 他人の気持ちを強く感じ取ってしまう(共感性が高い)
- 正義感や理想が強く、現実とのギャップに苦しむ
- 頭の中が常に忙しく、考えすぎて疲れる
これらが重なることで、まだ心が未熟な年齢であっても「心がいっぱいいっぱいになる」ことがあります。
メンタルケアのポイント
①安心できる「逃げ場」をつくる
静かなお部屋、好きな音楽、読書など、リセットできる時間を意識的に作りましょう
②「考えすぎて疲れてるかも」と親が気づく
問い詰めたり理由をは聞き出すのではなく、「疲れたら休んでいいんだよ」の声掛けを。
③自分の感情を言葉にする練習
自分の感情をうまく伝えられない場合は、感情カードや絵本、気持ち日記などを使って「気持ちを外に出す」習慣を作る。
ギフテッド児と家庭内の関係性(兄弟とのバランス)
よくある家庭内の課題
- ギフテッドの子への配慮が増え、兄弟姉妹が我慢してしまう
- 「あの子はできるのに」と比較され、兄弟に劣等感が生まれる
- ギフテッドの子が兄弟に対してマウントをとってしまう
家庭でできる工夫
①兄弟それぞれの「得意・努力」に注目
「あなたはこういうところが素敵だね」と、能力や結果でなく姿勢や特徴に注目した声掛けを心がける
②ギフテッドの子の「できないこと」を見せる
周囲から「なんでもできる子」と思われがちなギフテッドの子も、失敗や苦手に見せることで兄弟との関係が対等に近づきます。
③家庭内のルールを「公平に」保つ
できる・できないではなく「年齢・役割」でルールを分けることで納得しやすくなります。
ギフテッド児の二次障害予防(不登校や抑うつ)
ギフテッドの子供たちは、以下のような理由で自己否定間や社会不適応感を抱きやすくなります。
- 理解されない孤独感
- 感覚過敏や不安の蓄積
- 常に「ちゃんとしなきゃ」と思いすぎる
- できないことがあると「こんな自分はダメだ」と思ってしまう。
これが続くことで、やがて抑うつ状態や不登校につながる可能性があります。
予防のためのポイント
①「認められている実感」を積み重ねる
頑張った結果より、「あなたがいてくれて嬉しい」と伝える
②「他の子と違っても大丈夫」という安心感を作る
比較ではなく、「自分なりの成長」を一緒に喜ぶ
③休むこと・助けを求めることを肯定する
「苦しいときは声を伝えてね」を、日常の中で何度も伝える。
相談できる医療機関
ギフテッド外来という名称で診療を行っている医療機関は全国的に少ないですが、一部の児童精神科・発達外来・小児科・臨床心理センターなどで対応することが可能です。
ギフテッド外来として明記している施設
- 昭和大学付属烏山病院「ギフテッド児支援外来(専門外来)」【東京都】
- ギフテッド国際教育研究センター【東京都】
受診の目安
- 学校や幼稚園/保育園で「天才肌」といわれるが、集団生活や感情調整がむずか曽
- 「できないことがある」より「できることで浮いてしまう」という本人のストレスが強い
- 不登校・過敏・歌集中など二次的な困りごとが出てきている
- 知能検査えIQ130以上などの結果がある(なくて相談可)
受診までに準備しておくとよい情報
- 子供の得意なこと・困っていること・過敏さの具体例
- 学校や幼稚園/保育園の先生からのフィードバック
- (もしあれば)WISCなどの知能検査の結果
まとめ
ギフテッドの子供たちは、輝く特別な才能の裏側に、繊細さや生きづらさを抱えていることも多いです。「こんなに頭がいいのに、なぜこれがわからないの?」と驚く場面もあるかもしれません。
子どもの特性をよく観察し、「何が得意で何が苦手なのか」を知る。そして、その子にしかない「ペース」や「感じ方」を尊重しながら、安心して過ごせる環境を大人が一緒に整えていくことが、何よりの支援になります。
親も無理をせず。時に周りや医療機関に相談しながら、子供と一緒に一歩ずつ歩んでいきましょう。
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